10歳のNellyは、2年前に椎間板ヘルニアの手術をしてから脚が極度に弱くなり、ほとんど動くことができず、無気力になり食欲も低下していた。しかし、心配した友人のAnnie WashburnさんがNellyを鍼(はり)師のもとへ連れて行き30分の施術を3回受けさせたところ、動けるようになり、食事量も増えるなど奇跡的な回復がみられたのである。
よくある話だと思うかもしれないが、実はNellyは、Washburnさんが飼っているビション・フリーゼ(Bichon Frise)犬なのだ。Washburnさん自身、代替療法にはあまり乗り気ではなく、この効果は信じられなかったという。Nellyに施術した獣医鍼師のLeilani Alvarez博士も、かつては動物への鍼治療の効果についてやや懐疑的であったが、その後に体験した数百の奏効例は「期待をはるかに上回るものだった」と述べている。高齢で後ろ脚が弱くなり、便失禁をするようになったイヌの例では、飼い主も安楽死を考えたが、2回の施術で便失禁が治ったという。
専門家によると、動物の鍼治療は古くから行われており、数千年前の中国の記録にもウマや家畜への施術の記述がある。鍼治療は患者が信じなければ効果がないとの通説があるため、動物には効果がないと考える人が多いが、「鍼の効果は、何千年も研究されてきた施術部位(経穴[けいけつ=つぼ])に鍼を挿入することによって、身体に生理的刺激を与えることで得られるもの」とAlvarez氏はいう。
米バージニア・メリーランド地域獣医科大学のMark Crisman博士によると、ヒトの経穴を動物に変換するマップ(transpositional maps)作成に獣鍼医師らが時間を費やしてきた。必ずしも簡単な作業ではなく、例えば「馬には指がないため、ヒトの手に相当する経穴は、ひづめの周辺に変換された」という。獣医鍼治療は関節炎、急性損傷、股関節異形成、呼吸器疾患、免疫系疾患など多数の障害に有効であり、さまざまな家畜およびペット、さらにはスナネズミや鳥などの小動物にも効果があるという。嫌がる動物もごく少数いるが、ほとんどは2、3回目には喜んで治療を受けるようになる。これは鍼により自然の鎮痛薬であるエンドルフィンが放出されるためと考えられるという。
鍼治療は単独で効くこともあるが、西洋医学との併用が最適であることが多く、「例えば感染症がみられるときは、(鍼治療によって)血行を改善するとともに細菌を死滅させる抗生物質を用いるのがよい」とAlvarez氏は説明している。さらに、「ペットに鍼治療を受けさせたい飼い主は、施術者が米国の3施設(国際獣医鍼治療協会International Veterinary Acupuncture Society、Chi研究所[フロリダ州]、コロラド州立大学)のいずれかより認定を受けていることを確認する必要がある」と同氏は指摘している。
原文
[2009年3月3日/HealthDay News]
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