乳癌(がん)治療後によくみられるリンパ浮腫(痛みを伴う腕の腫れ)の再燃の予防に、ウェイトリフティング(重量挙げ)が有用であることが新しい研究で示された。これまでは、腕への負荷はリンパ浮腫を悪化させるため避けるべきであるとされてきた。この考え方に反する今回の知見は、米医学誌「New England Journal of Medicine」8月13日号に掲載された。
今回の研究では、リンパ浮腫のみられる乳癌手術後の患者141人を2群に割り付け、一方には週2回のウェイトリフティングを徐々に負荷を上げながら13週間続けた後、指導なしで39週間続けるよう指示し、もう一方の群には通常の運動メニューを続けるよう指示した。その結果、腕の腫れに5%以上の増大がみられたのはウェイトリフティング群で11%、対照群で12%であり、有意差はなかった。しかし、ウェイトリフティング群ではリンパ浮腫の症状に大きな改善がみられたほか、上半身および下半身の筋力向上、リンパ浮腫再燃率の低下がみられた。ウェイトリフティング群で再燃がみられたのは14%であったのに対し、対照群では29%であった。
研究著者の米ペンシルベニア大学(フィラデルフィア)医学部准教授Kathryn Schmitz氏によると、これまでのリンパ浮腫の対処法に関する標準的な指示は、皮膚を清潔にし湿度を保つ、爪を切る際に注意する、圧迫帯を着ける、リンパ排液を促す穏やかな運動をすることなどであった。腕の負傷や筋挫傷がリンパ浮腫の再燃に関連するとされ、買い物袋やハンドバッグさえ持ち上げるのを避けるよう助言されていたが、そうすると生活が不便になるばかりか、運動不足により筋力が低下し、筋挫傷や負傷が生じやすくなる。「徐々に筋力を上げていくようにすれば、腕が鍛えられ、腕を酷使してしまうこともなくなる」とSchmitz氏は述べている。
乳癌治療を受けた後リンパ浮腫を発症する女性は62%に上るという。医学誌「Journal of Clinical Oncology(臨床腫瘍学)」オンライン版に3月16日掲載された研究(印刷版は4月20日号掲載)によると、リンパ浮腫を発症した女性は自己負担医療コストが高いことがわかっている。このほか、リンパ浮腫があると生活の質(QOL)が低下し、不安や抑うつが高まり、慢性的な疼痛や疲労感が生じる比率が高くなるほか、社会的、性的機能での困難も大きいという。
同誌の論説では、徐々に筋力トレーニングをすることによりこのような医療コストを抑え、生活を向上させることができると指摘。これまで乳癌治療後の患者は買い物袋や子どもを持ち上げるにも躊躇し、リンパ浮腫リスクのため仕事に復帰することもできなかったが、今回の研究はそのような不安を解消してくれるものだとしている。
原文
[2009年8月12日/HealthDay News]
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